社会人になってから英語を学び直す人の動機は、本当にさまざまです。海外の取引先とのメールが増えた。昇進の条件にTOEICの点数が入った。子どもの英語の宿題に答えられなかった。定年後に一人で海外を歩いてみたい。それでも、学び直しを始めた時点の状態は驚くほど似ています。中学で習ったはずの文法はおぼろげで、単語は見れば分かるものもあるけれど、口からは出てこない。「ゼロから」という言葉がしっくり来る状態です。
大人の学び直しは、中学1年の内容から、ただし中学生とは違うやり方でやり直すのが近道です。教科書を最初から読み直すのではなく、自分の生活や仕事を英語で言うための道具として、文法を必要な順に拾い直していきます。1日30分を1年続ければ、ほぼゼロからでもCEFRのA2、英検®なら準2級のあたりまでは現実的に届きます。

大人の学び直しで有利なこと、不利なこと
有利な点は、思っているより多くあります。まず、日本語と英語の仕組みを意識して比べられること。中学生は規則を丸暗記するしかありませんでしたが、大人は「日本語ではこう言うのに、英語ではなぜこうなるのか」と筋道立てて考えられます。次に、目的がはっきりしていること。当時の英語を学ぶ理由は「テストがあるから」でしたが、今は使う場面が具体的に見えています。
不利な点は、時間と疲れと、少しのプライドです。仕事で疲れた平日の夜に、新しいことを覚えるのは楽ではありません。部下や後輩の前で中学生レベルの間違いをしたくない、という気持ちもあるでしょう。だからこそ、一人で、短い時間で、間違いを誰にも見られずにできる練習から始めるのが理にかなっています。
社会人の英語学び直しは何から始めるか
まず、自分がどこまで覚えているかを確かめます。次の三つの文を見て、すぐに意味が分かり、声に出して言えるかを試してください。
- She doesn't like coffee.(一般動詞の否定)
- I have never been to Canada.(現在完了)
- The book I bought yesterday is interesting.(名詞を後ろから説明する形)
1つ目で止まるなら中学1年の内容から始めます。2つ目で止まるなら、基本の動詞の使い方は残っているので、下の順番の2段階目、未来と助動詞のあたりから。3つ目まですらすら分かるなら、文法のやり直しは最小限にして、単語と話す練習を中心にした計画に進んでください。
1つ目の文を声に出して読むところからあやしい、という人もいるでしょう。恥ずかしいことではありません。その場合は最初の2週間を、文字と音の対応の練習にあててください。cakeとcatのaは音が違い、knifeのkは読みません。英語の綴りと音のおおまかな決まり(フォニックス)を知っておくと、初めて見る単語でも読み方の見当がつくようになり、辞書を引く回数が目に見えて減ります。
中学英語をやり直す順番
参考書を使うなら、中学3年分の文法を1冊にまとめた薄いものを1冊だけ選んでください。条件は二つで、例文の音声がついていることと、最後まで終えられそうな厚さであることです。分厚い文法書は、辞書として本棚にあれば十分です。そのうえで、次の順番で進めます。

1〜2か月目:be動詞と一般動詞、現在と過去
I amとI likeの違い、三人称単数のs、過去形。ここが曖昧なまま先へ進むと、あとのすべてがぐらつきます。例文は自分の仕事に置き換えてください。「I work for a car parts maker.」「I usually start work at nine.」。教科書の例文より、明日の会議で使える文のほうがずっと覚えやすいはずです。
3〜4か月目:未来、助動詞、疑問文
will、be going to、can、should、could。それに、自分で疑問文を作る練習です。会話では、答えるより尋ねるほうが流れを作れます。「When is the deadline?」「Could you send me the file?」のように、仕事で実際に聞くことを英語にしていきます。
5〜6か月目:現在完了、比較、不定詞と動名詞
現在完了は日本語にぴったり対応する形がないので、多くの人がここで混乱します。「I have lived in Osaka for ten years.」を、「10年前から住んでいて、今も住んでいる」という時間の幅として理解するのがこつです。
7〜12か月目:関係代名詞、受け身、長めの文
ここまで来たら、文法の勉強より英語を使う時間を増やします。1日の出来事を5文の日記にする、仕事のメールを週に一通だけ英語で書いてみる、短いニュースを読む。文法は、間違いに気づいたときに確かめる道具になります。単語の復習の仕方は英単語の覚え方の記事にまとめました。




